歴史に残る名著 ワイルド・スワン

読書日記

ノンフィクションは私の好きなジャンルの一つです。

事実は小説より奇なり、と言うように、こんな事が現実に起こったのか!?と、事実だからこそ心に響くものがあります。

事実だからこそ、自分がこの状況に置かれたらどうするか?と現実味をもって考えらえるし、世界で起こってきたこと、またこれから起こるであろうことに目を向けることで、自分の視野も広がると思うのです。

今日はそんなノンフィクションの中から、歴史的に後世に残したい!と思える1冊、ユン・チアン著、土屋京子訳の「ワイルド・スワン」(講談社)をご紹介します。

1993年に発行された本で、全世界で1000万部を超える、大ベストセラーとなったノンフィクションです。ご存じの方も多いと思いますが、10代、20代の方にとっては知らない方も多いのでは、と思い、改めて発信することにしました。

私がこの本を読んだのは10年以上前になりますが、ノンフィクションを好きになったきっかけとなったのはまさにこの本です。これ以降、様々なノンフィクションを読みましたが、これほどまで没頭し、衝撃を受けた作品はなかったと言っても過言ではありません。

物語は中国の清朝末期、著者の祖母の誕生から始まり、毛沢東の支配下、文化大革命という激動の時代を生きた著者の家族3世代に渡る物語です。

今でこそ中国は気軽に観光にも行ける国ですが、ひと昔前までは謎に包まれている国でした。特に、毛沢東統治時代については、ほとんどすべての情報が国家によって厳重に管理されており、恐怖に支配されていた人々がその口を開くこともなかったのではないかと思います。

そんな誰も知り得なかった中国の鎖国時代について、著者は中国共産党の高級幹部であった両親の体験や自身の鋭い観察力を通して、圧倒的なスケールと臨場感をもって描き出しています。特に3世代に渡って中国の内部事情を書ききったという点では、他に類をみないのではないでしょうか。本書で扱っている時代は清朝の崩壊から、日本の侵略、共産党時代から文化大革命終息後までと壮大なスケールで、著者を含む3世代の女性の人生は歴史のうねりとともに翻弄されていきます。政治という名の元に一体何が行われていたのか、赤裸々に綴られた残酷な真実にきっと衝撃を受けると思います。

貧困や飢饉に苦しむ人々の姿、新しい中国を建設しようと奔走する革命家の情熱、そしてその裏で自己保身のために密告を行う隣人。そこには苦悩や葛藤があり、それぞれの人生のドラマがあります。

私たちは歴史上の事実として中国の毛沢東時代の話や、文化大革命について学校で習うかもしれません。しかし、この本を読むことでその時代に生きた人々のがどのような生活を送っていたのか、何に怯え、何に希望を持って生きていたのか、生きた歴史が手に取るようにわかります。

それはきっと現代を生きる私たちからは想像もできないような、過酷な人生でありながらも、どこか共感できるような人間らしい愛情を感じさせるものです。この本はこの時代の人々の暮らしや、政治の真実を後世に伝えるという点でも歴史的な価値のある本だと思っています。

この本は一度読み始めると、波乱万丈の結末が気になってどんどん読み進めてしまいます。上下巻からなる長編ですが、息もつかせずぐいぐいと引き込まれてしまうような、読者をとらえて離さないユン・チアンの語り口も本書の魅力だと思います。

おすすめポイントまとめ
  • 圧倒的なスケールと臨場感で描く、中国共産党時代の内部事情
  • 激動の時代を生きながらも崇高な人間性を保っていた人々のドラマ
  • 読者をとらえて離さない、波乱万丈の物語

ぜひ、本書を手に取って読んでみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました